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2006年3月11日 (土)

2. 産科医が逮捕されたのを受けて

昨年、福島県で帝王切開後にお母さんがなくなった出来事があり、それを受けて、
昨日、担当であった産科医が起訴をされました。現在、医療関係者の中で大きな動揺
がおこっています。

新たな“いのち”が誕生するはずの、妊娠、出産で逆に“いのち”を失うなんて、
ご家族には思いもよらなかったことでしょう。とくにお母さんが亡くなられるというのは、
納得のできない、耐え難いことに違いありません。ところが、見えずらいかもしれませんが、
わたしたち医療者にとっても、自分たちが関わった“いのち”の不幸は、悲しく、
つらい出来事なのです。わたしたちも、もがき、苦しんでいるのです。

妊婦さん、ご家族と、産科医療者との今の関係は、暗黙のうちに「幸せな結果」を前提に
した、契約のようなものになってしまったのかもしれません。たとえ、それまでの関係が
すごく良くても、予期せぬことが起これば、この関係性は一気に壊れてしまうからです。

人が人であるかぎり、「いのちを生み出す出産は、いのちをかけた行為である」、という
原則にかわりはありません。住環境や衛生状態の改善をふくめ、国が豊かになったこと、
それに伴う医学の進歩は、日本の出産の安全性を著しく高めました。ところが、それでも、
1万の出産で約1人、数にすると年間で100名前後の女性が、妊娠、出産に関連する
原因でいのちをおとされているのです。
いのちの誕生を見守り、それが危うくなったときには何としてでもいのちを救おうと、
あらゆる手をつくす。でも、それがかなわない、どうしようもないケースに遭遇したとき、
医療者はどうすればよいのでしょうか。

どんな状況でも、誠意を示し、ミスがあればそれも含めて、すべてを正直にお話しする。
そして、悲嘆の中にある、ご家族の感情も受けとめていくことしかないのかもしれません。
でも、そんな苦境に立たされ、敗北感や罪悪感や言い知れぬ不安でいっぱいになって
いる医療者にも、支えが必要です。それまでの日々の積み重ねが、家族との暮らしも
含めて、一瞬にして、すべて奪われてしまうかもしれないのです。

今回、お母さんがなくなられているというあまりにも大きな事実があるので、コメントは
慎重になりますが、できるだけ多くの情報を集めてみると、今回のケースは少なくとも
逮捕、起訴となる過誤はなかったと思います。逆に、報道されている記事、裁判官の
コメントには、残念ながら昨今の医療不信の流れをうけた、医療、医師に対する偏見を
感じます。

もし、今回の件で、医師が有罪となったならば、今後の妊娠、出産への医療者のかかわり
に大きな影響がでてくるでしょう。それは、生む側にとっても大きな問題となっていくはずです。
すでに、それが避けられないところまで来ているのですが、どうすれば影響を最小限に
食い止められるのだろうかと、日々、模索しています。

これらすべてのことは、わたしたち医療側が、これまでは確かに透明性にかけ、きちんと
した説明責任を果たしてこなかったことが大きな要因であることに違いはありません。
今回の産科医の逮捕を受けて、わたしはこのブログをはじめようと決めました。

できることは限られているかもしれないけど、それでも、伝わる言葉で、“いのち”のことを
伝えてゆきたい。人の一生にかかわる医療の意味について、いいことも、わるいことも、
あるがままに伝え、皆さんとともに、考えてゆきたいと思います。

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コメント

堀病院、起訴猶予になりましたね。
ですが、遺族サイドが検察審査会にかける予定だそうだということを聞いて、産科がますます減るなぁ・・・と思ってしまいます。

堀病院こそは止めていませんが、大淀病院は今年度末に産科を止めてしまうそうです。日本全国眺めても、産科はどんどん閉鎖・・・。
本当は第2子が欲しいのですが、妊娠している最中に近場の産科が止めちゃったら・・・と思うと、踏み切れません。
いや、子供は諦めたといったほうが正しいのかも。

ご家族を亡くされた御遺族の気持ちは慮るにあまりありますが、感情的な活動が活発になるにつれて、産科撤退がますます加速している悪循環に嵌っていると思います。医師の方たちが、どんなに頑張っても救いきれない命だってあるのに。

子供は欲しい。されど、産み場所はナシ。
どうしたらいいのでしょうか。

産科がまだ多かった時代に出産を済ませられた方たちが凄く羨ましいです・・・・。

投稿 たんたん | 2007年2月13日 (火) 17時11分

竹内正人先生へ
今日(11月29日)茗荷谷での研修を拝聴しました。
3時間以上に及ぶ講演を、真剣に真剣に聴きました。
つらい体験を寄り添い受け止めると、
対象の人が次に受け止める側になって下さるという言葉は
自分自身の経験にあわせて考え強く共感しました。

先生の講演に感動し、先生の名前で検索をしたところ
このブログにたどり着きました。
先生が産科医の逮捕を受けてこのブログを
始められたということにすごく納得をしました。

本当にプロセスではなく結果ばかりが重要視され
いくら患者さんや対象の方と信頼関係を築いても
一度も現れたことがなかった親戚が出現し
「訴訟だ」と手のひらを返される時代。

マスコミは弱者の味方をしているつもりかもしれないけれど
マスコミが医療の現状を悪くしているとしか私には
思えません。(医療に限らないかもしれませんね)

日本テレビで産科の研修医を「絶滅危惧種」として
紹介していた深夜の番組、先生もご存知かと思います。
現場の真実の声を伝える番組を、ゴールデンタイムに
やって欲しいと強く思いました。

何か、だらだらと書いてしまい申し訳ありません。
今日の講演を受けて1つ先生にお伺いしたいことが
あります。
「死産・流産をなかったこととはせず、
対象の人が出してきた時には受け止めていく」
私も大切だと思い、仲間にもそのような支援を対象に
して欲しいと思うのですが、「意味があるの?」という
反発を買うことも予想されます。
先生も、今日の講演の中で「写真をとっているときに
何をやっているの」と言われた時期もあったと話されて
ましたが、反発を買った時、先生はどのように
乗り越えられ、自分の思いを信じつづけられたの
でしょうか?
やはり、それなりの効果を求められる時代。
説得力をもって、まわりに説明するには、
どうすればいいか???
お返事をいただけると幸いです。

投稿 よねすけ | 2006年11月29日 (水) 22時14分

蒲池さん、おはようございます。

>福島県での産科医逮捕で医療者の中におおきな動揺が起き
>ているということですが、主に産科医の間にでしょう。
>それが当然、と冷静に受け止めている人も沢山います。

おっしゃるとおりです。


>誠意を持って正直に話す。そして、繰り返さないように最善を尽くす。
>そういう事がなされていたら、家族はどこへも
>訴えなかったのではないでしょうか。

わたしも、同じように思っています。

投稿 竹内正人 | 2006年9月13日 (水) 10時01分

竹内先生
失礼しました。
福島県での産科医の逮捕を受けて、このブログを始められたんですね。
ここでも、やはり"いのち”のことを伝えてゆきたい・・・と?
また、堀院長逮捕の件ですが、
あれだけ何十年も違法行為をした堀院長が、まさか、まだ逮捕されていないとは思わなかったものですから・・・
不用意な書き込みになったことをお詫びします。


福島県での産科医逮捕で医療者の中におおきな動揺が起きているということですが、主に産科医の間にでしょう。
それが当然、と冷静に受け止めている人も沢山います。
初めの内は謝罪しておきながら、訴えられると、誠意のかけらもなく、口をつぐんでしまう。
亡くなった方の家族は、医師等の動揺に巻き込まれて、一番知りたいと思っている真実に到達することも出来ません。
私は、福島で逮捕された産科医が、最初に家族に謝罪した時の気持ちに立ち返り、誠意を示し、ミスがあればそれも含めて、すべて正直に話してもらいたいです。そして、二度と同じ事を繰り返さないための手段を講じてもらいたいと思います。
これは、先生もブログの中にも、
どんな状況でも、誠意を示し、ミスがあればそれも含めて、すべて正直にお話する。そして、悲嘆の中にあるご家族の感情も受け止めていくことしかないのかもしれません。
とありますから気持ちは同じはず・・・

家族が一番知りたいことは、何故今まで元気だった妻が、(娘が、又はお母さんが)死ななくてはならなかったのか?
という事ではないでしょうか?

誠意を持って正直に話す。そして、繰り返さないように最善を尽くす。

そういう事がなされていたら、家族はどこへも訴えなかったのではないでしょうか。

投稿 蒲地です | 2006年9月13日 (水) 09時39分

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