280. ストレッチャーを囲んで
R.Fさん こんにちは
娘は、胎児エコーで心臓病を発見して頂き、
搬送等の関係もあり帝王切開で出産しました。
三尖弁閉鎖症と胎児の時は説明を受け、数度の手術が必要であると聞き、
手術を受けながら、生きていく事が受け入れられず、
このまま治療をしないで欲しいと先生方にお話し、
出産後先生方と長い時間お話をしました。
もう4年前のことになるんですね
よく覚えていますよ
先生は、親としては気持ちは理解できるが、助かる可能性のある命を
そのままにする事は医師としてはできない。
とおっしゃり、私の言う事に決して強く否定せずに諭してくれました。
小児科の先生や小竹先生、私の両親等向かい合った中で、
ストレッチャーに寝た私が真ん中におり、先生に沢山話を聞いて頂きました。
そうでしたね・・・
あなたは超音波診断室の前の廊下で、ストレッチャーに寝ていて
私は中腰でストレッチャーの手すりに両手をかけていた
そのまわりをご家族、病院スタッフがとりまき
どうなるのかなと見守ってくれていましたね
私はあの時、医師として話さなくてはいけなかった
でも、その気持ちが強くなりすぎると、私たちはあなたのため、この子のために
これだけのことをしてあげて、赤ちゃんの搬送先まで決めて帝王切開をしてあげたのに
そして、搬送先からは、いつ到着するのかと連絡まできているのに、
この段になって、「何をいまさら・・・・・!」と、
あなたや家族の勝手さに感情的になり、それをなじり、否定し、
強引に、強圧的に説得しようとしてしまったかもしれません
R.Fさんにとっては、勝手でもわがままでもなく
そのままの気持ちだったのにね
もし、そうして、たとえあなたを搬送できたとしても
それで何事もなかったかのうように表面的に問題が解決できたとしても
本当にそれでよかったんだろうかと、私はきっと後味が悪かったことでしょう
医療者がかかえている、今の、宙ぶらりんな気持ちは
それに近い感覚なのかもしれません
こういう時、いつも思うのは、自分が親だったらどうなんだろうということ
実際、「先生だったらどうしますか・・・」って聞かれたことがあり
その時に、私は何も答えることができませんでした
娘は、昨年春5度目の手術で目標のフォンタン手術を受け、
春からは幼稚園にも通える事になりました。もうすぐ4歳です。
すごいね・・・
私が出産以来、娘の病気に対してかなり前向きになったのも
あの時、徹底的に思っている事全てを先生に聞いて
頂いたからだと思います。
先生は強く否定したりせず、優しく聞いてくださり、
私の気持ちを大事にしてくださり、本当に感謝しています。
長い時間、話に付き合って頂きとても幸せな環境であったと思っています。
よかった・・・
こういうとき、医師である私のほか、親である私と
ひとりの人であるわたしが共存して話しを聞いている
そういう気持ちをもっていないと、
母親や家族から、親として、人として自然な気持ちがわきでてきても
その感情を、ただ勝手なわがままや、「治療拒否」という
医療者側の理屈でしかとらえられなくなってしまう
逆に親として、人としてそのままの自分がいるから、
そんな気持ちも素直に聞くことができるのだと思います
「なんとか頑張ってくれ・・・」と、祈る気持ちであなたを送りだしたあと
それでよかったのか、私にはよくわからなかったけど
少しお役にたてたのかもしれないと、感じる私がそこにいました
先生と連絡を取れる場所を見つけ、
お礼とご報告がしたくメールさせて頂きました。
あれから4年たち、
あなたの心が、その後、開いてくれたということを知ることができ
あのときとつながることができた
伝えてくれて本当にありがとう
自分もなかなか、いけてたなと
ちょっと自己満足(笑)
そうやって、調子に乗ってしまうところが玉に瑕だけど
けっこう、そういう自分が好きだったりします(笑)
やっぱり、産科医になってよかった!
今妊娠中なんですね、お大事にね
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